title: “赤ちゃんを見送ったあとも産休は取れます——妊娠12週以降の制度は「理由」を問いません” date: 2026-08-02 categories: [“manabu”] hubs: [“decision”] tags: [“人工死産”, “中期中絶”, “産後休業”, “労働基準法”, “出産手当金”] summary: “自分で決めたのだから、休む資格はない——そう思っていませんか。法律は、その理由を問いません。妊娠12週以降であれば、産後休業の対象です。” image: “/images/article-main.jpg” medical: true sensitive: true reviewed: 2026-08-06 next: [] draft: false
自分で決めたことだから。休む資格なんて、ないんじゃないか——そう思っていませんか。
法律は、そこを問いません。妊娠12週(4ヶ月)以降であれば、その理由が何であっても、産後休業の対象になります。
これは、会社の義務です
会社は、産後8週間、あなたを働かせてはいけません。これは会社が温情でしてくれることではなく、法律があなたに与えている権利であり、会社に課された義務です。あなたが会社にお願いする話ではなく、会社が守らなければならないルールです。
労働基準法第65条は、妊娠4ヶ月(85日)以降の分娩を、赤ちゃんが生きて生まれたかどうかに関わらず「出産」として扱います。この条文に、「自然に」とも「選んで」とも書かれていません。産科的な処置によって赤ちゃんを見送った場合も、同じ「出産」として扱われます。あなたが処置に至った経緯とは、切り離された話なのです。
ただし、産後6週間を経過したあと、あなた自身が「働きたい」と請求し、医師が「支障がない」と認めた場合に限り、その業務に就くことができます。
知っておいてほしいこと
- この権利は、妊娠12週以降であれば発生します。出生前診断を受けて、悩んだ末に人工死産を選んだ場合も、法律の条文が生死や経緯を問わず「出産」としていることから、対象から外れることはないと考えられます。個別の状況にご不安があれば、会社の担当者や社労士など、専門家にも確認されると確実です
- 会社に申し出るときは、「産後休業」という言葉を使ってください。経緯を説明する必要はありません
- 産後休業中の給与が出るかどうかは、会社の規定によります(法律上、支払いの義務まではありません)
- 給与が出ない・減る場合は、健康保険から「出産手当金」(給与のおよそ3分の2)を受け取れることがあります。健康保険でいう「出産」も、妊娠85日以後であれば経緯を問いません。会社の担当者か、加入している健康保険の窓口に確認してみてください
- この休業の期間とその後30日間は、解雇も禁止されています(労働基準法第19条)
「理由」を、誰かに説明しなくていい
制度を使うために、会社や周囲に、決断に至った経緯を話す必要はありません。「産後休業を取ります」——それだけで、話は通じます。
自分を責めながら、休む資格まで自分で取り上げてしまう必要はないのです。法律が「理由を問わない」ということは、あなたが自分自身にも、同じことを許していい、ということだと思います。
赤ちゃんのいない「産後」を過ごすということ
制度の名前は「産後休業」です。でも、抱っこする赤ちゃんがいないまま過ごす8週間は、世の中でイメージされる「産後」とは、まるで違うものだと思います。何をすればいいのか分からない時間。育児のためではなく、ただ自分の体と心のためだけにある休み。それを、かえって落ち着かなく感じる方もいると聞きます。
そう感じるとしたら、それは、あなたの受け止め方がおかしいのではありません。この制度自体が、もともと「赤ちゃんのいる産後」を前提に作られたものだからです。名前と実態が合わない違和感を抱くのは、自然なことだと思います。
死産・流産全般の産後休業について、より詳しく知りたい方は、死産後も、産後休業は使えますもあわせてご覧ください。
フリーランス・個人事業主として働いている方へ
ここまでお伝えした産後休業は、労働基準法上の「労働者」を守るための制度です。個人事業主やフリーランスは、この法律の対象に基本的に含まれません。休ませる義務を負う「会社」が、そもそもいないからです。
だからこそ、意識して休んでください。誰かがあなたを止めてくれるわけではない分、「もう働ける気がする」と思った瞬間に、なし崩しに戻ってしまいやすいのがフリーランスという働き方です。出産手当金のような、雇われて働く人のための制度の支えもありません。休んだぶんの収入を埋めてくれる仕組みがない——それが、この働き方のいちばん厳しいところだと思います。
それでも、体はちゃんと、出産と同じだけのダメージを負っています。法律に守られていないからといって、回復が早くなるわけではありません。誰にも止められないからこそ、休むという選択を、あなた自身の手で、先に決めておいてほしいと思います。
次に読む: 職場にどこまで伝えるか
出典:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」産前・産後の休業について(労働基準法第65条・第19条)/全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産に関する給付」(健康保険の「出産」は妊娠85日以後であれば経緯を問わない)
