死産のあと、あなたの体は「産後」の道をたどります。

赤ちゃんがいないのに、体だけが産後に進んでいく——それは、とても理不尽なことだと思います。でも、これから体に何が起きるかを先に知っておくと、ひとつひとつに驚かずにすみます。この記事は、そのための道しるべです。

なお、体の経過には個人差があります。ここに書くのはあくまで目安で、あなたの体のことは、退院時の説明と主治医・助産師の言葉をいちばんに頼ってください。

体に起きること

退院のときに、説明の紙をもらったり、助産師から話を聞いたりした方も多いと思います。でも、あの時期に聞いたことは、頭に残らなくて当然です。家でひとりで驚かないように、もう一度ここに書いておきます。

悪露(おろ)が続きます。 出産のあと、子宮が元の大きさに戻っていく過程で、血の混じったおりものがしばらく続きます。少しずつ量が減り、色が薄くなっていくのが自然な経過です。

受診の目安をひとつ。ご自分の生理の、いちばん多い日(2日目くらい)の出血を思い浮かべてください。その量を明らかに超えるとき、あるいはそれくらいの量が何日も続くとき——そんなときは、我慢せずに産院へ連絡してください。大きな塊が出る、においが強くなる、熱が出るときも産院に連絡してください。

そして、これは私自身の実感ですが……トイレやお風呂のたびに、あの子のいた日々の形跡が体から流れていくようで、見るのが切なかった。悪露が終わったときには、「ああ、妊娠が終わってしまった」という気持ちになりました。体の回復のしるしが、そのままお別れのしるしでもある——悪露は、そういう時間かもしれません。

母乳が作られ始めることがあります。 産後数日して、胸が張ったり、母乳がにじんだりすることがあります。赤ちゃんがいないのに母乳が出る——これほど切ないことはないと思います。でも、それはあなたの体が、ちゃんと赤ちゃんのために準備をしていた証拠でもあります。

母乳を止める薬を処方してもらえる場合があります。私自身は、もともと母乳がよく出る体質なので、死産の後数時間でも母乳は少量ですが搾れるほどは出ました。搾った母乳をお供えするという道もあると知りながら、「これが最初で最後」と決めて搾乳をして、その母乳を赤ちゃんの横に添えて、薬を飲みました。搾り続けてお供えする方も、すぐに止める方もいます。どちらが正しい、はありません。張りや痛みがつらいときは、我慢せずに産院へ相談してください(ケアの具体的な方法は、別の記事で書く予定です)。

髪が、抜けることがあります。 産後しばらくしてから、髪がごっそり抜けて驚く方がいます。これもホルモンの変化による、産後の体によく起きることのひとつで、時間とともに落ち着いていきます。私も、けっこう抜けました。

生理(月経)も、いずれ再開します。 再開の時期には個人差があります。再開した日、「体が妊娠の前に戻ってしまった」と、また気持ちが揺れる方もいます。その揺れも、含めて自然な経過です。

とにかく、疲れます。 お産は、赤ちゃんが生きて生まれても亡くなって生まれても、体にとっては同じ大仕事です。全身が回復するには6〜8週間かかると言われています。産後休業が8週間と定められているのは、このためです。

心に起きること

この時期の心には、二つのことが同時に起きています。

ひとつは、赤ちゃんを失った悲しみ(グリーフ)。もうひとつは、妊娠を支えていたホルモンが急に減っていくことによる、気分の揺れです。

つまり、ただでさえ気分が揺れやすい「産後の心」の上に、深い悲しみが重なっている状態です。涙が止まらない、眠れない、何も食べたくない、逆に何も感じない——どれが起きても、不思議ではない時期です。

そのうえで、ひとつだけ目安を。眠れない・食べられない日が何週間も続く、自分を責める考えが頭から離れない、消えてしまいたい気持ちがよぎる——そんなときは、ひとりで抱えず、産院・自治体の保健師・相談窓口のどれかに、つないでください。それは弱さではなく、体の回復と同じ、必要な手当てです。

「産後」として、扱われてください

家族にも、できればこの記事のことを伝えてください。あなたは今、深い悲しみの中にいる人であると同時に、産後の回復期にある人です。家事や仕事をすぐに再開できなくて、当たり前なのです。

体を休めることに、罪悪感はいりません。あなたの体は大仕事を終えたばかりで、休むことが、いまのいちばんの仕事です。


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出典: 体の経過(悪露・母乳・生理再開等)は助産師としての臨床知識に基づく。産後休業の8週間は労働基準法第65条